


フランス語教師ジュリアンは、セクハラを受けたと生徒のレスリーから告発される。汚名を雪ごうとするジュリアンだったが、事態は悪化の一途をたどり…
昔はまかり通ってたのに、当たり前のことだったのに、今は…なことが多すぎて、何もかもやりづらい、生きづらい世の中になっていますね。とりわけ大変そうなのが、教育現場。私が子どもの時なんか、心身共に今だと確実に虐待認定されること、先生たちは公然と生徒にやってましたよ。いま同じことやったら、完全にアウト。ちょっとでも子どもへの接し方を誤ると、いや、誤ってなくても子どもの誤解や悪意で問題教師に祭り上げられてしまう恐怖が、この映画では描かれています。
学校の先生って、ほんと大変な仕事。好きじゃないとできないよな~。最近は特に高い志があるわけではないサラリーマン的教師が多いと言われてるけど、それでも給料に見合わないストレスに満ちた職業であることに変わりはありません。メンタルが強靭でないとできない過酷な仕事だと思います。今の時代の子どもなんて、私からするほとんどモンスターです。いつ牙をむくかわからない危険な生き物。子どもだから何しても結局は守ってもらえる、大人が悪者になる、ということをよく知ってる狡猾さが怖い。

この映画の主人公ジュリアン、真面目で教育熱心な、ほんと理想の先生なんですよ。情緒不安定で自意識過剰な女生徒の反感を買っただけで、あれよあれよと生き地獄のような窮地に陥ってしまうなんて、理不尽すぎる。生徒からも同僚からも人気があり信頼もされてた教師が、忌まわしいセクハラ教師に堕ちて糾弾され蔑まれる姿は、可哀想と同情すると同時にイライラ。明らかに生徒のほうが間違っているんだけど、もうちょっと彼らに対して柔軟に対応してたら、あそこまでこじれなかったはず。子どもに媚びろ、へつらえ、とは言わないけど、プライドが高すぎて妥協も偽善も拒むジュリアンは、あまりにも意固地で狭量でもあった。ゲイであることをカミングアウトすれば、女の子へのセクハラ疑惑も払拭できるかもしれないのに、そんなことしたくない!と頑なに拒むし。あれじゃ味方じゃなくて敵が増えるだけ。痴漢やセクハラの冤罪という憂き目に遭わないためには、日ごろから気を引き締めて、安心しすぎない、自信過剰にならないことが肝要ですね。
この映画、実話がベースになってるとか。それにしても。この映画に出てくるガキども、ほんとムカつく連中ばっかなんですよ。生徒間のいじめも陰惨ですが、生徒による先生いじめも卑劣で残忍。実際にも、教師がノイローゼになったり自殺したりするニュース、よく聞きますが…子どもだからって、何でも許すことはできません。移民が多い下層階級の子どもたち、攻撃的で排他的でどこか心が荒んでいる様子も怖かったです。いろんな人種や宗教、文化が混在しているフランスの学校、日本の学校もいずれはあんな風になっちゃうのかな。

ジュリアン役のフランソワ・シヴィル、「Five」や「なんたるフィアスコ?!」など、コメディでのアホ役がいつも強烈ですが、シリアスドラマの時の彼はイケメン化。ちょっと伊藤英明似?あがけばあがくほど破滅に近づいていく男を、痛々しくも誇り高く演じてます。キャマっぽさは全然ないけど、ふとした仕草とか表情とかで、ゲイらしさを巧く出してました。ジュリアンの彼氏が、中東系?のイケメン。優しくて忍耐強い、素敵な年下のカレだった。すごく愛し合ってることがわかる恋人同士の雰囲気、やりとりでしたが、残念ながらラブシーンとかはありませんでした。