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Channel: まつたけ秘帖
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下宿人の誘惑

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 夏のBL映画祭⑤
 「コバルトブルー」
 90年代のインド、ケーララ州。家族と暮らす作家志望の大学生タナイは、下宿人の男と恋に落ち彼との情事に溺れる。しかし男は、親が決めた結婚を嫌う妹アヌジャーを連れて姿を消してしまい…
 いっとき人気があったインド映画。恥ずかしながら、初めて観ました。インド人、やっぱ濃ゆいですね~。イケメンも美女も濃すぎて、胃に重い料理みたい。淡白な私には受けつけがたいものがあります。インド系でも、リズ・アーメッドとかコスティア・ウルマンぐらいの濃さなら丁度いいのですが。それはそうと。インドもちょっと前までは、LGBTに厳しい国だったようですね。90年代になっても同性愛は差別偏見の対象どころか正式に犯罪だった、とか信じがたい事実です。インドの人口を考えれば、当時もものすごい数の同性愛者がいたはずなので、彼らがすさまじい辛酸をなめたことは察するに余りあります。でもこの映画の主人公タナイは、そんなに深刻に苦悩してる様子もなく、何だか夢見る夢子ちゃんっぽいフワフワしてるんですよ。大学教授は彼に気があり、新しい下宿人の若い男とは恋愛関係に、とかゲイ遭遇率が高くない?そんなに出会えるもんなの?禁断の関係なのに、タナイと下宿人は結構おおっぴらにセックスしたりイチャイチャしたり、フツーならすぐバレるようなことばっかしてるので、表向きは厳しいけど意外と見て見ぬフリしてるユルさがインド社会にはあったのかな、とも思いました。

 しかしこの映画、ゲイの兄の恋人を妹が奪い家庭崩壊、という「想い出にかわるまで」も真っ青な結構なドロドロっぷり。タナイがさしずめ今井美樹で、アヌジャーが松下由樹、といったところでしょうかアヌジャーは見た目もキャラもボーイッシュ、美人だけどかなり男っぽく、いつも女の子とばかり仲良くしてて異性に興味がなさそう、結婚を死ぬほど嫌がってたこともあり、てっきり彼女も?と思い込んでしまってたので、唐突すぎる男との駆け落ちは腑に落ちないものが。下宿人の男とそんな感じ全然なかったし。兄と妹、両方を食った挙句に姿を消す下宿人の男、何者だったの?どういうつもりだったの?ただの無責任すぎるヤリチンバイセクシャル?とんだゲス野郎を下宿させちゃったものです。でも、彼に捨てられたことを機にタナイとアヌジャーは自由に生きる人生を選ぶことになるので、あの下宿人は古いものから解放される新しいインドを象徴する存在だったのかな。

 BLよりも、インドの風習や社会が興味深かったです。厳格で根強いカースト制度や家父長制、著しく軽視されてる女性の権利。とても近代社会とは思えません。古い因習に加え、同性愛は犯罪とするイギリスの植民地だった時代の悪しき名残など、インドの複雑さと歪みも垣間見えました。ファッションや食事など、これぞインド!でした。男性は涼やかで、女性は華やか。サリー着てみたい。料理が美味しそうでした。タナイ一家はわりと裕福だったこともあり、インドといえばの極貧風景はほとんどなく、舞台となったケーララはかなりトロピカルな南国風で、これもインドに抱いてるイメージとは異なってました。

 タナイ役の俳優はブサイクではないのですが、もうちょっと可愛いイケメンだったらと思わないでもなかった。名前不明の下宿人役の俳優は、英国俳優のエドワード・ホルクロフトを超濃ゆくした感じの男前で、肉体美をこれでもか!と見せまくってました。下宿人の職業は芸術家だったけど、芸術家が何であんなマッチョなの?男同士のラブシーンはソフト。湖のほとりでアオカンしてると象が現れるとか、インドでは当たり前のことなの?!まあ、熊が出てくるよりはいいのかな、でも象も怖いわ🐘

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