


イギリスでマリファナビジネスを成功させたアメリカ人ミッキーは、事業を売却して引退しようとしていた。その巨大な利権をめぐって、熾烈な暗躍と死闘が繰り広げられることに…
遊び心ある軽妙洒脱な演出と、小粋な台詞で裏社会の男たちを描いた「スナッチ」や「ロックンローラ」など、ガイ・リッチー監督の犯罪コメディ映画がすごく好きです。この新作も、リッチー監督らしさにあふれていて楽しかったです。脚本がいつも秀逸。小道具の使い方や伏線の張り方・回収が今回も冴えてました。意外なキャラが後で需要な存在となる設定に、お!そうきたか!とニヤリ。何でもないような出来事、ザコキャラと油断してスルーすると驚かされます。乱暴で下品なボキャブラリーぶっこんでも、会話がシャレオツ(死語)。

演出と脚本もすぐれているのですが、リッチー監督作の何が素晴らしいかというと、やはりキャスティングでしょうか。いつも俳優選びのセンスがいい!ルックスのよさと演技力を備えた個性的な男優たちの魅力合戦こそ、リッチー監督作品最大の魅力だと思います。アカデミー賞狙い系の熱演とか力演ではなく、大暴れしながらも肩の力の抜けた軽やかで楽しそうな演技なのがいいんです。この新作は、今までで最もゴージャスかつシブいな顔合わせかもしれません。若造でもでもないジジイでもない、男盛り働き盛りな俳優たちが愉快に過激に演技と魅力を競っています。ミッキー役のマシュー・マコナヒー、いい男♡

マコもすっかりシブい熟年になりましたね~。ダンディだけどイギリス人とはやはり違う明るさ爽やかさがあって、強いアメリカの威信をかけ英国に殴り込み。オールアメリカンな風貌のマコですが、ブリティッシュなスーツも似合っててカッコいい!優しそうだけどキレたらヤバい、昭和やくざみたいなコワモテ恫喝も迫力満点で、日本のイケメン俳優がやくざ役して無理してイキってるのとは大違いです。

同じリッチー監督の「コードネーム U.N.C.L.E」ではチョイ役だったヒュー・グラント、今回はもっともオイシイ役でした。かつて一世を風靡した英国美男俳優軍団の顔的存在だった彼も、すっかり枯れたおじさんに。すっかりなのは、セコくてズルい役がオハコになってることも。この作品でも、口八丁手八丁で怖い男たちを翻弄し出し抜き、イイトコドリをしようとする小悪党な探偵を、トボけた感じで好演して笑わせてくれます。知的に自虐的なところが最近のヒューおじさんの独特な持ち味になってます。
大好きな男前二人、チャーリー・ハナムとコリン・ファレルの顔合わせこそ、私にとってはこの映画最大の魅力&見所!


ミッキーの右腕レイモンド役のチャーリーは、「キング・アーサー」に続いてのリッチー監督作出演。イギリス人だけどアメリカ人っぽい明るさと爽やかさ。髭もじゃ顔でもイケメン!冷静沈着で穏やかだけど、ボスのために必要とあらば荒っぽくもなる若頭チャーリーの暴れっぷりも痛快豪快でした。女っけがなく粉骨砕身にボスに尽くす姿は、マコとチャーリーがすごい男前同士だけに腐な妄想をかきたててくれました。

ボクシングジムのコーチ役のコリン・ファレルも、なかなかオイシイ役でした。子分どもがマコのシマを荒らしてしまいその尻ぬぐいでチャーリーに手を貸すコリン、チェッカーズなユニフォーム?と困り顔が可愛い!一般人に迷惑をかけるクソガキどもを一瞬でボコる、その鮮やかな腕っぷしがカッコよかった。もうイケメンって感じではなくなってるコリンですが、おっさん臭は全然ないです。チャーリー&コリンのコミカルなやりとりとブロマンスな共闘に萌え。

コリンの子分どもが大暴れしながら歌って踊ってラップしてYouTubeにアップ、その動画がふざけてる、かつカッコよくて好き。あと、ミッキーを恨んで陥れようとしていた新聞社編集長を、最後にギャフンと言わせる方法がゲロゲロ(死語)で笑えます。いくら何でもあれは可哀想!ロンドンの公園や郊外にある貴族の屋敷も、イギリス好きには目に楽しいです。底辺生活者が暮らす団地は、ニューヨークのスラム街に劣らぬヤバさ。俗悪な金持ちアメリカ人を蔑んでるけど、屋敷の維持や生活のためにビジネススマイルでへいこらしてるイギリス貴族たちの姿が、みじめで皮肉でした。パブでビールの飲みたくなる、お城で紅茶飲みたくなる、そんな気分にさせてくれるイギリス映画が好きです。次はどんないい男を集めてくれるのか、リッチー監督の新作が楽しみ。