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Channel: まつたけ秘帖
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BLは悲愴の調べ

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 「無伴奏」
 学生運動で荒れる1969年の仙台。女子高生の響子は、“無伴奏”という喫茶店で出会った大学生、渉に心惹かれるが…
 直木賞作家、小池真理子の小説を映画化。
 うう~ん…正直に申せば、いろんな意味で期待はずれで物足りませんでした。劇中のBLが、腐の萌えや琴線に触れてこないというか…BLの扱いが、浅くて雑というか…人気イケメン俳優のBLシーンで、ミーハーな女性を釣ろうと目論んでいたようですが…フツーの女子ならキャー♡かもしれませんが、コアでディープな腐からすると、私らバカにされてるのかしらん…と疑いたくなるような浅薄さでした。ほとんど伏線などないまま、終盤になって急にBLな展開とか、すごい取ってつけたようで失笑。渉と祐之介が妖しい禁断の関係にあるとか、そういう感情を抑えてるとかいった、匂わせるものがBLシーンに至るまで全然なかった。

 まあ、腐を対象にした映画ではないので、仕方がないのかもしれません。三島由紀夫や吉田修一のようなゲイの心理、美醜を熟知した作家や、腐だけをターゲットにしたBL漫画や小説と違い、同性愛なんかどうでもよいけど、特殊な恋愛の中で自分がヒロインになるための道具には使えると、頭でっかちな文学少女が妄想で創った話、みたいな感じ?BLはあくまで脇役。そこに腐は白けてしまいます。腐にとっては、女など無に等しい存在であり、せいぜい男たちの当て馬にされるだけのキャラ。女目線でBLを語るのは構わないけど、女がヒロインにしゃしゃり出るなんて言語道断で愚の骨頂、なのです。

 かくいう私も、乙女の頃は退廃的で文学的な恋愛に憧れていました。でもでも、月日流れてそこから一周も二週もして、今ではこの映画のような恋愛など、気持ち悪くてめんどくさいだけです複雑な家庭、孤独な翳り、実姉との妖しい関係、文学的で詩的な台詞…少女漫画的には渉って、典型的な悲劇の王子さまキャラなのですが、私からしたらイラっとするだけ!気取ってんじゃねーよ!と、殴りたくなる男です。いつもスケッチブック持ち歩いてたり(大久保清かよ!)、『人生が好きかい?』とか不意に訊いてきたり、60~70年代だからまかり通ったイケメンキャラだな~と、苦笑をもらしてしまう言動がイタかったです。私は渉みたいな虚無きどりなスカした文系男よりも、頭からっぽだけど明るくて健康的なスポーツ青年のほうが好きです。
 難しい文学とかクラッシック音楽とかに影響を受けすぎると、この映画の若者たちのように不健康で不健全な人間になってしまいます。世の中のことを退屈そうに見下して、けだるげに振る舞うことのほうが、愚直に明るく生きることより高尚…と若い間は思ってもいいとは思いますけれど。それにしても、響子や渉みたいな娘、息子がいたら、ほんとめんどくさいな~。歪んだグレかたですよね~。

 当時の学生運動の様子は、興味深く描かれていました。私もあの当時に学生だったら、あーなってたのかしらん。過激なことはしないだろうけど、下っ端としてクラブ活動なノリでコソコソ楽しんでかも。当時のJKファッションが可愛かったです。
 ヒロイン響子役の成海璃子が、しばらく見ぬ間にすっかり成熟、ていうか、おばさん化しててビックリ。二十代前半とは思えぬムッチムチボディは、すでに熟女の肉体。喋り方もおばさんっぽくて、何もかもがたくましすぎる。ゆえに、まだ青い果実であるはずの響子のデリケートさ、危うさがなかった。濡れ場はなかなか頑張ってましたが、かたくなにバストトップを隠してたのはかなり不自然でした。何で出し惜しみするの。そんなに貴いものなの?必然性があれば脱ぐのが女優なのでは。
 私がこの映画を楽しみにしてたのは、言うまでもなく池松壮亮が渉役だったから(^^♪

 池松くん…顔は童顔なんだけど、雰囲気がもう酸いも甘いも嚙み分けた、疲れ果てた熟年男みたいです。煙草を吸う姿、風情も板につきすぎ。若いのに退廃と悲哀のムード漂う池松くんは、どんな作品でも独特な存在感を放っていて、この映画も例外ではありません。でもね~…最近は何だか似たような役、演技ばかりで、そんなのばかり要求されているのか、はたまた彼の演技の幅が狭いだけなのか、気になってしまいます。明るい凛々しい彼もそろそろ見たいものです。
 脱ぎっぷりのよさ、濡れっぷりでも定評のある池松くんですが、この映画でも潔く脱いで濡れてます。

 女を抱いて男に抱かれる、見事な両刀ぶりでした。実際にもエッチ巧いんだろうな~と思わせる、こなれたキスや腰の動き、行為中の囁き方です。ガリガリ寸前の痩せ型なので、もうちょっと肉つけてくれたらもっとエロくなるかも。

 祐之介役は、来る仕事ぜんぶ引き受けてる?な斎藤工。大学生役は、ちょっと無理があったかも。彼も似たような役しかやらせてもらえない俳優ですが、挑発的で挑戦的なことしたい!という気概は、すごくあるのでは。この映画でも、見た目も演技もいつもとそう変わらぬくんですが、目玉であるBL濡れ場では、成海璃子の100倍は気合いが入ってた!

 池松くんに勝るとも劣らぬ脱ぎっぷりでした。愛撫やキス、喘ぎ声、恍惚顔もエロかったです。申し訳程度のものではなく、結構ながながとネットリと撮られてれてました。BLシーンにかぎって言えば、邦画でも洋画でもなかなかお目にかかれないような濃密さでした。

 腐としては、渉と祐之介を主人公にした物語が良かったんだけどね~…二人ともでも、精神的に病的というか、自己陶酔過剰だわ。出口のない悲劇の恋人になりきりすぎ。アメリカにでも行けば、幸せに生きられたのでは?もうちょっと遅く生まれてたらよかったのにね。でも二人とも、あの性格からしたら、いつどこで生まれても、悲劇に酔いそうだけど

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